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「あんな事があったね」と笑い合えたら

あの公園はどデカイマンション キスしたベンチはもう無かった

終わらない物なんてこの世には無くって、必ず全ての物事が終わる。どんなに苦しくても、どんなに悲しくても、どんなに楽しくて幸せでもいつかは終わりが来る、というか忘れ去られてしまう。
efishに初めてきたのは大学2回生くらいの頃だったか、軽音楽サークルとは別にもう一つひっそりと所属していた小さな旅サークルの先輩に連れてきてもらった。何だかんだで色んな人とこの場所に来た思い出がある。小学校の同級生、サークルの先輩、今は良い飲み友達になれた、ネットで知り合った男の人。夏は大きなガラス窓が全開になっているので、生暖かい風が入る。虫も一緒に入ってくるけれど、夜の鴨川を何も考えずにぼうっと眺めるのが好きだった。このカフェで話した内容は、毎回違う。就活の話、サークル内の恋の話、バンドがしたいなって話。そんな思い出を残してきたこのカフェが今年の10月に閉店するらしい。
このカフェに来る時は、決まって私の周りの人に転機が訪れるタイミングな気がする。私にも転機が訪れているのかもしれないけれど。
また一つ、お気に入りの場所が無くなるのはとっても寂しい。でも、いつかこの寂しさや虚しさも忘れてしまうんだろう。いや、正しくは忘れるんではなくて、日々新しい事をインプットしていくにつれて頭の片隅に追いやられ、簡単に開けることの出来ないブラックボックスに収納されちゃうんだろう。


1週間くらい前、夢に大学時代に付き合っていた人がふと現れて、私に「久しぶり。また連絡してくれや」と言った。もう未練なんて1mmも残ってないし、遠い昔、8年程前の付き合っていた頃の思い出も忘れてしまっているものが殆どで、こんな夢をどうして今自分が見たのかわからない。夢は本当に不思議。普段、全くと言っていいほど夢を見ない私にとってこの出来事は本当に訳がわからなかった。
その夢を見た日、仕事を終えて、勤務先近くの喫茶店へ足を運んだ。すると、そこで働いていた男の人を見て私は、冷や汗が止まらなかった。つい今日の夢に出てきた昔の恋人にそっくりだった。4度見くらいした。飲んでいたコーヒーが噎せて解りやすく咳込んだ。余りにも似てるので、どう声をかけようか…でもこの人が京都にいるわけ無いよな…って思いながら、私の心中はバックバクでした。まぁ実際赤の他人やったんやけど。
当時は色んな葛藤があったし、酷いことも言ったし、沢山泣いたりしたけれど、「時間」っていうのは本当によく出来た薬で、今は私に関わってくれた人が幸せになってくれるならそれで良いやって思っている。あの時は子供でごめんなさいって謝りたい。

いくら忘れても、きっと忘れきれない思い出が脳みそに焼き付いている。それはインスタントカメラの一枚一枚の写真の様に、部分的なワンシーンでしか思い出せないし、見えないし、色褪せていく。毎年同じ季節が巡って、去年はこうだったとか、あの時あの場所でこんな話をしたなぁとか、ふと思い出す。どうでもいい部分ばかり覚えてしまってる。思い出は思い出の儘で美しいんだけども、私の脳は使い捨てなので、都合良く忘れていくのである。